子宮がんの患者さんが国内で光免疫療法を受けるためにはどうすればよいのでしょうか。治療の種類ごとに見ていきましょう。
光免疫療法は多くのがん患者さんが実用化を待ち望んでいますが、現在はまだ承認前の治療法です。
ただ、承認に先駆けて一足早く光免疫療法を受けることができる医療機関が日本国内にあります。子宮がんへの効果も含め、そちらに相談してみることをおすすめします。
近赤外線免疫療法も光免疫療法と同じく承認前のがん治療法です。現在のところ国内において臨床試験が積極的に実施されていますが、子宮がんの患者さんはその対象になっていません。したがって、子宮がんの患者さんが近赤外線免疫療法を受ける手段は現時点では存在しないというのが実情です。
2020年6月25日現在、子宮がんの光免疫療法に関する研究結果などは発表されておりません。
近赤外線免疫療法は国内外において臨床試験が急ピッチで進められており、早期の承認と実用化が期待されています。しかし、その臨床試験の対象は一部のがんに限られ、誰もが治療を受けられるわけではありません。
一方、光免疫療法であれば、承認前の現在でも治療を受けることができる医療機関が国内にあります。詳しくは下記の特集ページをご覧ください。
子宮に発生する悪性腫瘍が、子宮がんです。
子宮がんは発生する部位によって大きく2つに分けられ、原因も特徴もまったく異なります。
子宮内膜に発生するのが子宮体がんです。がんの組織によって類内膜がんや漿液性がん、明細胞がんなどに分類され、もっとも多いのが類内膜がんです。漿液性がんや明細胞がんは悪性度が高いとされます。
子宮体がんは女性ホルモン「エストロゲン」の刺激が長期間にわたって続くことで起こる場合と、それとは別に糖尿病や遺伝の影響が考えられる場合とがあります。
子宮の入り口である子宮頸部に発生するのが子宮頸がんです。がんの組織によって扁平上皮がん、腺がんなどに分類されますが、その多くは扁平上皮がんです。
子宮頸がんの発生にはヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関連しているとされています。通常は性交渉で感染しても免疫によって排除されますが、排除されずに感染が継続すると子宮頸がんを生じることがあります。また、喫煙も子宮頸がんのリスクを高めるとされます。
子宮がんの場合、もっとも多くみられる自覚症状は不正出血です。月経ではないのに出血がみられたり、閉経後に出血がみられたりする場合は注意しなければなりません。このほか、排尿時痛や排尿困難、性交時痛や下腹部痛などが出現したり、進行するとお腹が張る感じがしたりします。
子宮頸がんの場合は前がん状態(異型性)を何年か経てがんになります。その時期は出血や痛みなどの症状はみられません。
いずれにしても、気になる症状がある場合は早めに婦人科を受診することです。定期的な検診も早期発見に役立ちます。
子宮がんも他の臓器のがんと同様、進行の度合いをステージ(病期)として分類します。
子宮体がんの場合は、がんのサイズだけではなく、子宮の筋肉層にどのくらい深くがんが及んでいるか、リンパ節や他の臓器に転移しているかどうかでステージを判断します。実際には手術で摘出したがんを病理学的に診断し、どのくらいがんが広がっていたかを調べて、大きくⅠ~Ⅳ期の4段階に分類することになります。
子宮がんの治療にあたっては、基本的に手術療法が第一選択肢となります。手術によってがんを取り除き、その際にがんの広がり方を正確に判断して、放射線療法や化学療法の追加を検討します。
進行している子宮がんの場合は開腹手術を行ないます。切除する範囲が広くなると合併症を起こすことがあるため、安全性を十分に検討したうえで適切な手術法を選択することになります。その際、患者さんの年齢や症状を加味して卵巣や卵管を一緒に切除するかどうかを決めます。
早期がんの場合は、開腹せずに腹腔鏡を使った手術や手術用ロボットの支援による手術が普及してきています。身体への負担が少なく、出血を抑え短期間の入院で済むなどのメリットがありますが、進行がんの場合は適応になりません。
また、既往症や年齢、全身状態によっても変わってきますので、主治医とよく相談しましょう。
高エネルギーのX線やガンマ線を照射してがん細胞を死滅させるのが放射線療法です。主に手術後の再発予防を目的とし、体外から放射線を照射する外部照射や、膣内から照射する腔内照射といった方法があります。子宮頸がんの場合は放射性物質を直接がんに挿入する組織内照射という方法も検討されます。
高齢で体力的に手術が困難な場合や、既往症・合併症などによって手術ができない場合は放射線療法が選択されます。また、進行がんにおける転移の痛みを抑えたり、著しい出血を止めたりするのを目的として実施する場合もあります。
子宮体がんの場合は、再発防止を目的として手術後に点滴注射や内服薬による化学療法を実施することがあります。また、手術でがんを切除しきれない場合やそもそも手術の実施が困難な場合、がんが再発してしまった場合にも化学療法を実施します。
一方、子宮頸がんでは遠隔転移がある場合や再発してしまった場合に化学療法を実施します。この場合は生活の質を維持しつつ、延命効果を得ることが治療の目的となります。
ここで、化学療法に用いる代表的な薬剤をみてみましょう。
細胞障害性抗がん剤は、がん細胞が増殖するシステムの一部を阻害することでがん細胞を退治する薬剤です。ただし、がん細胞だけではなく正常な細胞にも影響を及ぼすため、さまざまな副作用をもたらすことにもなります。
子宮頸がんの場合は、放射線療法の効果を高めることを目的として、細胞障害性抗がん剤を併用することがあります(化学放射線療法)。
子宮体がんで再発の可能性が高い場合は、補助的な治療としてホルモン製剤を用いた内分泌療法を行なうことがあります。また、抗がん剤の効果が期待できない場合にも選択される治療法です。
がん細胞の増殖に関与する特定のたんぱく質をターゲットにしてがん細胞を攻撃する薬剤が分子標的薬です。子宮頸がんではベバシズマブという薬剤が用いられ、細胞障害性抗がん剤と併用されます。
がん細胞が血液やリンパの流れに乗って別の臓器に到達し、そこで増殖することを転移といいます。また、治療によってがんが消失したように見えても再び出現するのが再発です。
子宮の外壁は血管が多いので、子宮体がんが筋肉層の深い部分まで及ぶと転移する可能性が高くなります。子宮体がんは卵巣や卵管に広がっていくことが多く、他にもリンパ節や膣、腹膜、肺に転移することもあります。
子宮頸がんでは肺や脳、骨盤より上部の大動脈周辺リンパ節、骨などに転移が多くみられます。
放射線療法を実施した部位に再発すると、再治療による合併症の可能性が高まります。したがって化学療法が選択される場合も多いのですが、初回治療ほど効果は期待できません。その場合は生活の質を維持するため対症療法を検討することになります。
骨盤の中に再発してしまった場合は、直腸や膀胱などの臓器も併せて取り除く手術を行なうこともあります。そうなると人工肛門や人工膀胱を造設しなければなりません。
Clinic