甲状腺がん

甲状腺がん患者は光免疫療法を受けられるのか?

甲状腺がんの患者さんが国内で光免疫療法を受けるためには、どうすればいいのでしょうか。治療の種類ごとに見ていきましょう。

光免疫療法(薬品名:リポソーム)を受けるには

これまでには存在しなかった新しいがん治療法として注目されている光免疫療法ですが、今のところは承認前の治療法となっています。

一方で、承認に先駆けて光免疫療法を受けることができる医療機関が日本国内に複数あります。甲状腺がんへの効果も含め、そちらに相談してみることをおすすめします。

近赤外線免疫療法(薬品:IR700)を受けるには

リポソームを用いた光免疫療法と同様に、近赤外線免疫療法も国内では未承認の治療法です。治療を受けるには診療試験に参加する以外に方法はありません。

国内では国立がん研究センター東病院において、頭頸部がんの患者さんを対象にした近赤外線免疫療法の臨床試験が実施されています。頭頸部がんとは脳より下、鎖骨より上に発生したがんですので、がん組織のタイプによっては甲状腺がんも含まれます。

臨床試験の条件

しかし、すべての頭頸部がんの患者さんが臨床試験を受けられるわけではありません。主な条件としては、

などが挙げられます。もちろんこのほかにも厳格な参加基準が設けられているので、参加できるのは一部の患者さんに限られます。とくに甲状腺がんの場合は、この基準をクリアするケースは相当に限られてくると考えられます。

臨床試験に参加できても治療が受けられるとは限らない

そして忘れてはならないのは、臨床試験の性質上、参加できたからといって必ず近赤外線免疫療法を受けられるとは限らないことです。

この場合の臨床試験は治療法の優劣を計る比較対象が必要なため、近赤外線免疫療法を受ける患者さんと、医師が選択した標準治療を受ける患者さんに分けられるからです。いずれかを患者さん自身が選択することはできません。詳しくは当該医療機関にお尋ねください。

甲状腺がんの光免疫療法に関する研究について

2020年8月4日現在、頭頸部がんの中でも甲状腺がんに限定した光免疫療法に関する大きな研究成果は発表されておりません。

光免疫療法が受けられる病院について

近赤外線免疫療法は臨床試験を中心とした研究・開発が進められています。現段階では未承認のため、その臨床試験に参加できなければ近赤外線免疫療法を受ける手段がないのが実情です。

光免疫療法であれば、甲状腺がんの患者さんでも承認に先駆けて治療を受けられる可能性があります。光免疫療法を実施しているクリニックは下記のページをご覧ください。

そもそも甲状腺がんとは

甲状腺に発生する悪性腫瘍が甲状腺がんです。

甲状腺は人体における最大の内分泌腺(ホルモンを分泌する臓器)で、そこに発生する甲状腺がんは大きく分けて2つ、ひとつは甲状腺の細胞ががん化して発生した原発性甲状腺がん、そしてもうひとつが他の臓器で発生したがんが転移してきて増殖した転移性甲状腺がんです。

甲状腺の役割

甲状腺は首の前側、のどぼとけのすぐ下側に存在しており、蝶のような形で気管の表面に広がっています。

甲状腺の役割は甲状腺ホルモンをつくり出すことです。幼少期は甲状腺ホルモンが成長に関わり、大人になると身体の新陳代謝を調節します。平たくいうと身体に元気を与える物質で、性別や年齢に関わらず一定量が分泌されています。

甲状腺がんの種類

甲状腺がんには多くの種類があり、乳頭がん、濾胞がん、低分化がん、髄様がん、未分化がん、悪性リンパ腫などが挙げられます。ひとつずつ見ていきましょう。

乳頭がん

甲状腺がんの中でもっとも多いのが乳頭がんで、全体の約90%を占めています(2018年7月時点)。リンパ節に転移しやすいがんですが進行は非常にゆっくりで、適切な治療を受ければ生命にかかわることはほとんどありません。

参照元:国立がん研究センターがん情報サービス/甲状腺がん(こうじょうせんがん)

しかし、一部の乳頭がんは再発を繰り返す場合があります。悪性度の高い未分化がんに移行することもあり、高齢で発症した場合は悪性度が高い傾向がみられます。

濾胞がん

甲状腺がんの中で乳頭がんに次に多いのが濾胞がんです。リンパ節への転移は少ないものの、血液の流れに乗って離れた臓器や骨に転移しやすい傾向があります。転移しなければ生命にかかわることはそれほど多くないと考えられています。

低分化がん

低分化がんの発症率はまれで、乳頭がんのような高分化がんと未分化がんの中間的な特徴を有します。甲状腺の中に高分化がんと共存する場合や、未分化がんに移行する場合もみられます。

髄様がん

髄様がんは、甲状腺の中の傍濾胞細胞(ろほうぼうさいぼう)ががん化して発生します。乳頭がんや濾胞がんよりも進行が早く、リンパ節や肺、肝臓への転移を起こしやすいと考えられます。遺伝性の場合もあるため、発症すると家族も含めて検査を行なうこともあります。

未分化がん

未分化がんは悪性度が高いため、進行が早いのが特徴です。反回神経や気管、食道など周辺臓器へ広がりやすいだけではなく、肺や骨など離れた臓器への転移も起こしやすいと考えられます。

悪性リンパ腫

甲状腺に発生する悪性リンパ腫は、慢性甲状腺炎、いわゆる橋本病が要因になっている場合が多いと考えられています。甲状腺全体が短期間のうちに急速に腫れたり、嗄声(声のかすれ)や呼吸困難をともなったりする場合もあります。

甲状腺がんの症状

甲状腺がんの症状として一般的なのは結節(しこり)ですが、それ以外の症状はみられないことが多いようです。まれに嗄声や呼吸困難、飲み込みにくさ、圧迫感や痛み、血痰などの症状がみられる場合もあります。

甲状腺がんのステージ(病期)分類

がんの進行の度合いはステージ(病期)として分類しますが、これは甲状腺がんも同様です。甲状腺がんの場合は種類や進行の度合いによって治療法が変わってくるため、ステージを正確に把握することが重要となってきます。

たとえば乳頭がんや濾胞がんの場合は患者さんの年齢によって異なりますが、55歳を境に転移の有無だけではなくがんのサイズや広がり方によって分類が変わります。55歳未満であれば転移の有無によってⅠ~Ⅱ期の2段階ですが、55歳以上だとそれ以外の要素も含めてⅠ~Ⅳ期の4段階となるわけです。

甲状腺がんの治療方法

甲状腺がんの治療方法は、前述のステージや患者さん本人の希望なども含めて検討していきますが、基本的には手術療法、放射線治療、薬物治療といった標準治療を実施することになります。悪性度が高い未分化がんの場合を除くと、ほとんどのケースでは手術が第一選択となるでしょう。

腫瘍の大きさが小さく、周辺臓器への浸潤や転移の可能性が低い場合は、手術などの積極的な治療を選択せず定期的な検査で経過観察を行なっていく場合もあります。

甲状腺がんの転移・再発

がん細胞が血液やリンパの流れに乗って他の臓器に到達し、そこで増殖することを転移といいます。また、がんが治療によって消失したようにみえても、再び出現することを再発といいます。

甲状腺がんの多くは、他の臓器のがんに比べて予後は良好だと考えられていますが、中には転移や再発を起こす場合もあります。再発はもともとがんがあった部位や周辺のリンパ節に起こることが多いようです。

乳頭がんや濾胞がんが転移した場合は、放射性ヨウ素による内用療法などを行ないます。髄様がんや未分化がんの転移や再発がみられる場合は、患者さんの状態に応じて治療方法を検討することになるでしょう。

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