懸命な治療にも関わらず、再発・転移を起こし進行してしまったがん。
手術も不可能、抗がん剤治療や放射線治療も期待できない、標準治療では限界、そんなステージ4のがんに光免疫療法はどんな効果があるのかお話しします。
前ページでがんのステージについてお話ししましたが、がんが最初に発生した部位(原発巣)を超えて、離れた場所の臓器や器官に転移している状態がステージ4です。
末期がんとは治療方法がもう残されていない、もしくは通常のがん治療では体力を奪って死期を近づけてしまう、つまり「これ以上の治療はできない」状態です。余命宣告を受けるのもこの時期でしょう。
このように、ステージ4といっても末期がんの場合とそうではない場合があります。いずれにしても、ステージ4となると5年生存率は一気に下がり、すべてのがんの平均で約16パーセントといわれています。
参照元:国立研究開発法人国立がん研究センター(https://www.ncc.go.jp/jp/information/pr_release/2019/0808_1/index.html)
再発・転移したがんは、手術が可能な部位で体力が持つのであれば可能な限り切除しますが、そうでなければ抗がん剤治療や放射線治療でがん細胞の増殖を抑える治療を行ないます。
そのように進行してしまったがんでも、根治できる可能性はゼロではありません。しかし、多くの場合は治療が困難であり、それ以上の進行を抑えることや痛みなどの症状を和らげることが治療の目標となります。
「がんが治らない」ということを受け入れることはとてもつらいことです。がんと診断されたとき以上のショックを受けるかもしれません。気持ちを落ち着けることは難しいですが、それでも今後の治療と療養生活について考えていく必要があります。「治らない」ということは「治療ができない」ということではありません。
ステージ4における治療法を考える場合は、これまでの治療の進め方と同じように、がんの状態や患者さんの体調に応じた治療法を選択していくことになります。具体的には、受けてきた治療の効果に基づいて現在起きている症状や患者さんの気持ちなどを考慮して、どんなことができるか考えていきます。
例えば、できるだけ副作用や後遺症が少ない治療法を選択する、症状に応じて治療の優先度を変える、つらいときにはその症状を和らげるといったことです。対症療法や緩和ケアといった、心身両面に優しい治療を選んでいくことになるでしょう。
ここで挙げたのはステージ4における一般的な治療法ですが、HITV療法(治療型がんワクチン療法)などステージ4でも効果があるといわれている免疫療法もあります。しかし、他の免疫療法と同様に有効性を示す治療実績データはまだ集まっていないのが現状です。
光免疫療法は、転移がんに対しても効果があります。それはなぜでしょうか。
がん細胞に光をあてて破壊するというのが光免疫療法ですが、この方法でがん細胞を破壊すると、さまざまながんの抗原(目印)が一斉に露出します。正常な細胞はまったく影響を受けず、近くの免疫細胞がこの抗原を取り入れてその情報をリンパ球に伝えます。
するとリンパ球は活性化して分裂し、同じ抗原を持つ転移がんを攻撃しに行くのです。これが、光免疫療法が転移がんにも効果があるという理由です。
また、国内で行なわれている光免疫療法に用いられるリポソームは、細胞膜や生体膜の成分であるリン脂質で構成されているため、正常細胞には影響を与えずがん細胞にのみ作用するため、ステージ4の転移がんのように進行したがんで体力が低下していても受けることができます。もちろん、痛みを抑える対症療法や緩和ケアとの併用も問題ありません。
※光免疫療法はすべてのがんの根治につながるものではありません。
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