肉腫・骨肉腫の患者さんが国内で光免疫療法を受けることはできるのでしょうか。また進んでいる研究がないか調査し、まとめています。
肉腫・骨肉腫の患者さんが国内で光免疫療法を受けるためにはどうすればいいのでしょうか。治療の種類ごとに見ていきましょう。
大きな期待が寄せられている治療法とはいえ、光免疫療法はまだ承認前のがん治療法です。ただ、承認に先駆けて光免疫療法を受けることができる医療機関が日本国内にあります。肉腫への効果も含め、そちらに相談してみることをおすすめします。
近赤外線免疫療法もリポソームを使った光免疫療法と同様に未承認のがん治療法です。
国内では臨床試験が積極的に実施されていますが、現在のところ肉腫の患者さんは対象にはなっていないようです。したがって、残念ながら肉腫の患者さんが近赤外線免疫療法を受ける手段はないのが実情です。
2021年5月23日現在、肉腫・骨肉腫の光免疫療法に関する大きな研究成果は発表されておりません。
近赤外線免疫療法は国内でも臨床試験が積極的に実施され、1日も早い承認・実用化が目指されているところです。しかし対象となっているのは一部のがんのみで、肉腫は対象となっておりません。残念ながら肉腫の患者さんは近赤外線免疫療法を受ける手段がないのが実情です。
光免疫療法であれば、承認に先駆けて治療を受けることができる病院が国内にあります(2020年5月現在)。詳しくは下記のページをご覧ください。
肉腫は希少がんとされ、患者数が少なくまれながんと位置づけられています。患者さんの数が少ないこともあり、他のがんに比べて医学上の課題・問題点が数多く残され治療が困難ながんです。
日本国内においては、骨に発生する肉腫は年間10万人に約1人、脂肪や筋肉、神経、血管など軟部に発生する肉腫は年間10万人に約3人(2021年3月時点)と、患者数の多い他の臓器のがんに比べてはるかに低い発生頻度です。その一方、肉腫の組織型は50種類以上にのぼり悪性度もさまざまであるため、希少性と多様性が肉腫の特徴だといえるでしょう。
骨の肉腫の症状として最も多いのは腫れや痛みでしょう。しかし腫れや痛みはスポーツなどでも出現しますし、変形性の疾患でも見られる症状なので、それだけで肉腫を発見することは極めて困難だといえます。肉腫が進行すると骨が弱くなって折れてしまうこともあり、それで初めて肉腫が見つかるケースもあります。
軟部に発生した肉腫の症状も腫れがみられ、しこりをともなうこともありますが痛みは出ないことが多いようです。身体の深い部分に肉腫が発生した場合は、かなり大きくなってから初めて見つかることも少なくありません。神経の近くや神経そのものに肉腫が発生した場合は、しびれや麻痺といった症状が現れることがあります。
肉腫も一般的ながんと同様にステージ(病期)として分類されます。分類は原発腫瘍の大きさやリンパ節転移の有無、遠隔転移の有無、悪性度といった要素の組み合わせで、ステージⅠからⅣまでに分かれます。
ステージ要素は具体的には、
T因子(原発腫瘍の大きさ)
N因子(リンパ節転移の有無)
M因子(遠隔転移の有無)
G因子(悪性度)
肉腫の種類にもよりますが、リンパ節や離れた臓器に転移がなければ手術で取り除くことで治癒する可能性が高いといわれています。しかし、それ以上のステージに進行すると手術は困難になります。
腫瘍の悪性度が低く、所属リンパ節への転移や遠隔転移がない状態です。
腫瘍の悪性度は高くとも大きさは5cm以下の状態です。また、腫瘍の大きさは5cm以上でも浅いところに存在しているのであればⅡ期に分類します。いずれも所属リンパ節への転移や遠隔転移はありません。
腫瘍の悪性度が高く大きさも5cm以上で、深いところに存在している状態です。Ⅲ期でも所属リンパ節への転移や遠隔転移はありません。
腫瘍が所属リンパ節への転移や遠隔転移を起こしている状態です。
また、原発腫瘍の手術を行なう際に指標とする分類もあります。その場合は組織学的悪性度、腫瘍局在、遠隔転移の有無などによってステージを分類します。
腫瘍局在とは、腫瘍が筋肉や骨といった区画内にあるかどうかということです。筋肉なら筋肉の中に、骨なら骨の中に腫瘍がとどまっているか、広がっているかによって手術の可否を判断します。
その場合のステージは以下のとおりです。
腫瘍の悪性度が低く、区画内に収まっている状態です。遠隔転移はありません。
腫瘍の悪性度は低いものの、区画外まで広がっている状態です。遠隔転移はありません。
腫瘍の悪性度が高いものの、区画内に収まっている状態です。遠隔転移はありません。
腫瘍の悪性度が高く、区海外まで広がっている状態です。遠隔転移はありません。
腫瘍が遠隔転移を起こしている状態です。
肉腫の治療は手術療法が基本となります。手術は腫瘍そのものだけではなく正常組織を含めた広範囲の切除を行なうため、根治の可能性だけではなく手術による身体機能喪失の問題も考慮しなければなりません。ここは生活の質も大きく関わってくるため、患者さんの希望も重要視されます。
また、1980年代以降は肉腫の術前・術後に化学療法(薬物療法)が導入されたことで、治療成績が著しく向上しました。そのため、手術が困難な肉腫の患者さんには化学療法が推奨されています。現在も新たな抗がん剤が次々に開発されており、肉腫の治療効果に大きな期待が寄せられています。
手術療法は、肉腫治療の要となる治療法です。手術では完全切除による根治を目標として、肉腫周辺の骨や筋肉などの正常な組織も腫瘍部位と一緒に取り除く広範切除が行われます。ただし、正常な組織も取り除くことは生活の質にも大きく影響するため、手術適応には患者さん本人や家族の希望、術後に予測されるリスクや予後改善の見通しなどを明確にしなければなりません。肉腫の種類によっては補助療法として化学療法と放射線治療のいずれか、もしくは両方を併用して行う場合があります。
進行や再発、転移などによる手術が困難な肉腫治療の場合、一次治療としてアントラサイクリン系抗がん剤による有用性が証明されています。また、二次治療に用いる抗がん剤として推奨されている3剤が日本でも2012年以降に承認を受けたことで、肉腫の治療法の選択肢が大きく展開しました。そのほかにも肉腫を対象とした新たな抗がん剤が開発されており、抗がん剤による肉腫治療の可能性が今後さらに期待できるかもしれません。
患肢や機能を温存しながら完治率を向上させる治療開発が進められており、複数の治療法を組み合わせる集学的治療の一環として化学療法とともに放射線治療が行われています。特に軟部肉腫の場合、手術に放射線治療を追加することで生存率の向上が明らかになっているとのこと。ただし、手術と放射線治療の併用には照射した範囲が固くなる線維化、リンパ浮腫、関節の動きの制限、骨折のリスクなど副作用への注意が必要になります。
近赤外線や低反応レベルレーザーを照射してがん細胞を破壊する光免疫療法は、先進のがん治療として注目が高まっています。ただし、未承認の治療法のため、どの医療機関でも治療を受けられるわけではありません。光免疫療法を希望する場合は、承認に先駆けて治療を行っている医療機関に相談する必要があります。
がんの遺伝子治療は、がん抑制遺伝子を体内に投与して異常化した遺伝子の正常化を促す治療法です。国内ではまだ承認を受けていない治療法ですが、2020年6月にタカラバイオが大塚製薬と共同開発した滑膜肉腫の遺伝子治療薬が政府の「先駆け審査指定制度」に指定されたと発表。これを受けて早期承認に向けて政府の助言や指導を受けられるようになったため、滑膜肉腫のように治療の選択肢が少なかったがんにも新たな展開を期待できる可能性がでてきています。
参照:京都新聞/滑膜肉腫の遺伝子治療薬が、政府の「希少疾病用再生医療等製品」に指定 タカラバイオが大塚製薬と共同開発(https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/290111)
転移とはがん細胞がリンパ液や血液の流れに乗って他の臓器に到達し、そこで成長することをいいます。軟部肉腫の場合は肺に転移する可能性が高く、次いで皮膚やリンパ節、骨などに転移する場合もあります。肺やリンパ節に単独で転移した場合は、予後が良いと予想されるのであれば手術を行なうこともあります。
再発とは治療で腫瘍がなくなったあとに再び出現することをいいます。同じ部位やごく近くに腫瘍が出現する局所再発の場合は、再び手術を行なって治癒を目指します。状況によっては化学療法を組み合わせることもあります。
Clinic