前立腺がんの患者さんが国内で光免疫療法を受けるためにはどうすればよいのでしょうか。治療の種類ごとに見ていきましょう。
これまでになかった新しいがん治療法として世界中の注目を集めている光免疫療法ですが、2020年3月時点では承認前の治療法です。
ただ、承認に先駆けて光免疫療法を受けることができる医療機関が日本国内にあります。前立腺がんへの効果も含め、そちらに相談してみることをおすすめします。
近赤外線免疫療法も光免疫療法と同じく承認前のがん治療法です。早期の承認と実用化を目指して国内でも臨床試験が積極的に実施されていますが、2020年3月時点で前立腺がんの患者さんは対象になっておりません。したがって、前立腺がんの患者さんは近赤外線免疫療法を受けることができないのです。
2020年6月25日現在、前立腺がんの光免疫療法に関する大きな研究成果は発表されておりません。
近赤外線免疫療法では、臨床試験の前段階である基礎研究レベルにおいて前立腺がんも対象になっているようです。
近赤外線免疫療法は国内でも積極的に臨床試験が実施されていますが、2020年3月時点で前立腺がんの患者さんは対象となっておりません。
光免疫療法であれば、前立腺がんの患者さんでも承認に先駆けて治療を受けることができる医療機関が国内にあります。詳しくは下記のページをご覧ください。
前立腺に発生する悪性腫瘍が前立腺がんです。前立腺は男性生殖器の一部で、膀胱の下部に尿道を包み込むように位置しています。
前立腺がんの多くは進行がスローペースで、高齢者の場合は発症しても寿命に影響しないと判断されることもよくあります。事実、前立腺がんは男性の高齢者に多く、典型的な高齢者のがんだといえるでしょう。
ただ、前立腺がんには家族歴が大きく関与するとされ、家族に前立腺がんが発症している場合は若年でも発症リスクが高くなると考えられます。
日本泌尿器科学会がまとめた2018年版の前立腺がん検診ガイドラインによると、高精度のがん登録実施地域において、検診や健診で発見される前立腺がんの割合は、2006年の13%から2013年の27.1%まで年々上昇していることが分かっています。
この原因としては、何よりまず高齢化が挙げられるでしょう。前立腺がんは高齢者のがんといわれているのでなおさらです。食生活の欧米化も影響しているでしょう。
また、検査が普及して前立腺がんを発見しやすくなったのも理由の1つといえます。
他の多くのがんと同じく、前立腺がんも初期の自覚症状はほとんどみられません。進行すると頻尿や排尿困難、排尿時の痛み、残尿感といった症状が現れますが、前立腺肥大症と症状が似ているため気づかないことも少なくないようです。
このように前立腺がんは発見が遅れがちですが、近年では前立腺がんに特異的な腫瘍マーカー検査も普及しているため、きちんと検査を受ければ早期に発見できるようになっています。
他の臓器のがんにもあるように、前立腺がんにも進行度を表すステージ(病期)分類が用いられます。これによって治療法などが検討されることになります。
一般的にステージの分類は、がんが周辺組織や臓器に及んでいるか、リンパ節に転移しているか、離れている臓器に転移しているかによって決まります(TMN分類)。
治療は第一に手術を検討します。その場合は、基本的に前立腺をすべて摘出します。前立腺がんは前立腺の中にいくつも発生する傾向があるので、一部分だけを取り除いてもがんが残ってしまう可能性があるのがすべて摘出する理由です。
放射線療法も前立腺がんには有効な治療法です。体外から放射線を照射する一般的な方法もありますが、前立腺がんの場合は放射性物質を前立腺に直接埋め込む方法もあります。
また、前立腺がんは男性ホルモンの影響で進行するので、その分泌を抑えるホルモン剤を使用した薬物療法を行なう場合もあります。
前立腺がんの治療は手術が第一選択肢となります。他の臓器のがんと違ってがん病変だけを取り除くのではなく、基本的に前立腺をすべて摘出します。
前立腺がんは前立腺の中に多発する傾向があり、前立腺ごと取り除かなければがんを取り残す可能性が高いためです。
このほか、小さな臓器のため部分切除が難しいことや、前立腺の摘出が生命に関わらないことも理由として挙げられます。
近年では身体的負担の少ないロボット支援手術も普及しつつあります。
前立腺がんの手術の代表的な合併症は、尿失禁と性機能障害です。
手術では排尿を調節する筋肉がダメージを受けるため、尿道の締まりがコントロールできなくなって咳などのきっかけで尿が漏れてしまうことがあります。手術中は可能な限り神経や筋肉を温存させますが、完全に防ぐことは困難です。多くの場合は半年程度で回復しますが、100%元通りにならないケースも存在します。
また、手術の直後はほとんどの場合で勃起障害が起こります。個人差はありますが、完全に回復することは難しいでしょう。神経が温存できれば、内服薬での治療が有効だとされています。
前立腺がんはアンドロゲンという男性ホルモンの影響で発症し、進行していくホルモン依存性のがんです。
つまり、男性ホルモンがなければ増殖できないのです。この特性を利用して、男性ホルモンの分泌や吸収を阻害する内分泌療法が治療の中心となり、がんが再燃化した場合は抗がん剤治療を行ないます。
男性ホルモンを抑制するため手術で精巣を取り除く方法もありますが、一般的には薬物療法で男性ホルモンを抑制します。
厳密には抗がん剤治療というより男性ホルモンを阻害する内分泌療法なのですが、いずれにしても副作用は起こり得ます。主な症状はのぼせやほてり、発汗などのホットフラッシュ、性機能障害、骨密度の低下による骨折のリスク、疲労感などです。
治療によってアンドロゲンが低下すると、女性ホルモンが優位になって乳房が大きくなったり、乳頭の痛みが出現したりすることもあります。副作用が強い場合は、薬剤の変更や治療中断を検討しなければなりません。
前立腺がんに対する放射線治療には、通常の体外から放射線を照射する方法と、放射線を発生する線源を前立腺に直接埋め込む方法の2つがあります。どちらも転移がない前立腺がんを治療する目的で実施するものです。
治療効果は手術と同等とされ、患者さん自身の希望や生活スタイルなどによって治療法を選択することになります。
前立腺がんに対する放射線治療の副作用は比較的軽度だといわれていますが、もちろんゼロではありません。治療期間中に起こりうる症状としては頻尿や排尿痛、排尿困難などが考えられ、放射線で直腸の一部が刺激を受けると排便障害や痔のような症状が出る場合もあります。
治療後数カ月から数年後に直腸出血などの副作用が起こる場合もあり、症状に応じた治療が必要です。炎症がひどくなって潰瘍を起こすこともありますが、これはきわめてまれなケースです。
当サイトで紹介している光免疫療法は、光をあててがん細胞を破壊するというまったく新しい治療法ですが、免疫細胞を活性化させる効果もあるため広義では免疫療法のひとつといっていいでしょう。
このほか、免疫療法には患者さん自身の免疫細胞を利用する免疫細胞療法があります。
具体的には患者さんの血液から免疫細胞を取り出し、増殖・活性化させて体内に戻すことでがん細胞への攻撃力を高めるというものです。
免疫細胞の司令塔とも呼ばれる樹状細胞を活性化させる「樹状細胞ワクチン療法」などが代表的な免疫細胞療法として挙げられ、前立腺がんへの効果も高いという見方もあります。
免疫療法の多くは患者さん自身の免疫細胞を増殖・活性化させて体内に戻すという治療法ですので、重篤なアレルギー反応などの副作用は考えにくいとされています。
しかし、免疫の作用を高めすぎてしまうと正常な細胞や臓器を攻撃してしまい、それが副作用として出現する可能性も皆無ではありません。その症状は皮膚や肺、胃腸や筋肉の炎症となって現れることが多く、甲状腺機能低下など内分泌障害を引き起こす場合もあります。
このような免疫関連副作用が起きた場合は治療を中止し、免疫を抑制するステロイド剤などの投与を検討します。
体内で日々発生しているがん細胞が死なずに病気としてのがんを発症するのは、人間が本来もっているがん抑制遺伝子が異常をきたしていることが理由のひとつです。
そこで、正常ながん抑制遺伝子を投与することでがん細胞の増殖にブレーキをかけ、アポトーシス(自然死)を促すというのが遺伝子治療のメカニズムです。
また、がん抑制遺伝子の作用を弱めてしまう特殊なタンパク質の存在も明らかになっており、こちらを抑制する物質も遺伝子治療に用いられています。
前立腺がんにおいても、多くにこのタンパク質の発現が認められています。
2020年11月時点では遺伝子治療は「自由診療」となっているので、治療を希望される場合は必ず費用や治療の詳細について、クリニックの公式サイトをご確認ください。
遺伝子治療で投与するがん抑制遺伝子は、もともと人間の身体に備わっているものなので大きな副作用が起こる可能性は低いと考えられています。
副作用があったとしても一過性の発熱がほとんどで、吐き気や不眠、じんましんなどがみられる場合もありますが、軽度な症状だけで落ち着くようです。
とはいえ、中には身体が治療タンパクを異物だとみなし、アレルギー反応を起こしてしまうこともあります。治療にあたっては慎重にアレルギーテストを行なわなければなりません。
がん細胞が血液やリンパの流れに乗って他の組織や臓器に移動し、そこで増殖するのが転移です。また、治療後に残ってしまったがん細胞が再び大きくなるのが再発です。
前立腺がんが進行すると、転移しやすいのはリンパ節や骨盤、背骨などです。ホルモン療法を受けていると骨粗しょう症のリスクが高くなるため、背骨に転移してしまうと厄介です。骨が押しつぶされる圧迫骨折の状態をきたすこともあります。
治療後にPSA(前立腺の上皮細胞に現れるたんぱく質)が上昇すると再発の兆候です。それに続いて画像検査や触診で確認できるようになると、再発がかなり進行しているとみてよいでしょう。
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