悪性リンパ腫

悪性リンパ腫患者は光免疫療法を受けられるのか?

悪性リンパ腫の患者さんが国内で光免疫療法を受けるためにはどうすればいいのでしょうか。治療の種類ごとに見ていきましょう。

光免疫療法(薬品名:リポソーム)を受けるには

光免疫療法はまだ未承認のがん治療法です。しかし、承認前でも光免疫療法を受けることができる医療機関が日本国内にあります。悪性リンパ腫への効果も含め、そちらに相談してみることをおすすめします。

近赤外線免疫療法(薬品:IR700)を受けるには

光免疫療法と同様に未承認のがん治療法である近赤外線免疫療法を受けるためには、日本国内では臨床試験に参加するほかに手段がないのが実情です。
ただ、頭頸部がんをはじめとした複数の種類のがんに対しては臨床試験が行われていても、悪性リンパ腫の患者さんは対象になっておりません。したがって、悪性リンパ腫の患者さんは近赤外線免疫療法を受けることができないのです。

悪性リンパ腫に近赤外線免疫療法は効かない?

そもそも近赤外線を照射できない白血病や骨髄腫などの血液系のがんや骨のがんには、近赤外線免疫療法の効果を期待することは難しいとされています。悪性リンパ腫の場合、体表に近いリンパ節であれば照射可能ですが、深い部分には困難かもしれません。

悪性リンパ腫の光免疫療法に関する研究について

2020年5月23日現在、悪性リンパ腫の光免疫療法に関する大きな研究成果は発表されておりません。

光免疫療法が受けられる病院について

近赤外線免疫療法は実用化に向けた臨床試験が世界中で積極的に実施されており、国内においても同様です。しかし、悪性リンパ腫の患者さんは臨床試験の対象になっていないので、近赤外線免疫療法を受ける手段は事実上、存在しないことになります。

光免疫療法は承認前でも受けることができる医療機関が国内にあります(2020年3月現在)。詳しくは以下をご覧ください。

そもそも悪性リンパ腫とは

悪性リンパ腫とは、白血病や多発性骨髄腫と同じく血液のがんで、免疫をつかさどる白血球のひとつであるリンパ球ががん化して起こる病気です。首や腋の下、足の付け根のリンパ節にしこりが発生し、それが全身の臓器に広がっていく可能性があります。

悪性リンパ腫の原因は明らかになってはいませんが、遺伝的要因やがん遺伝子の活性化、ウイルス感染などが原因だと考えられることもあります。

細かく分類すると50種類以上もの病型がありますが、大きく「ホジキンリンパ腫」と「非ホジキンリンパ腫」の2タイプに分けられます。

ホジキンリンパ腫

日本人では少なく、全体の悪性リンパ腫のうち10%がホジキンリンパ腫です。非ホジキンリンパ腫よりも治癒率が高いと考えられ、悪性度が高くても化学療法や造血幹細胞移植によって十分な治療効果が期待できます。

非ホジキンリンパ腫

日本人の悪性リンパ腫の90%を占めるのが非ホジキンリンパ腫で、ホジキンリンパ腫よりも全身にリンパ腫が広がる可能性が高いと考えられます。がん化したリンパ球の種類や悪性度などによって治療法が変わってきます。

参照元:武田薬品工業株式会社(2021年6月調査時点):https://www.takeda.co.jp/patients/lymphoma/about2/

悪性リンパ腫の症状

先ほど説明したリンパ節のしこりは、比較的初期のうちから発生することも多くあります。原因不明の発熱や体重減少、ひどい発汗なども悪性リンパ腫の特徴的な症状です。

悪性リンパ腫が進行して臓器に広がっていくと、部位によってさまざまな症状が出現します。胸部のリンパ節であれば呼吸に支障をきたすこともありますし、腹部のリンパ節であれば下半身のむくみや排尿障害などがみられます。

もっとも恐ろしいのは悪性リンパ腫によるしこりが増大して気道や血管、脊髄などが圧迫されることで、気道閉塞や血流障害、麻痺などが出現すると生命にかかわります。

悪性リンパ腫のステージ(病期)分類

一般的ながんと同じく、悪性リンパ腫も進行の状態をステージ(病期)として分類します。悪性リンパ腫の場合はリンパ節病変の状態によってステージⅠからⅣに分けられ、ほかのがんのステージに使われるTMN分類(がんの大きさや広がり、転移の有無)を用いないのが特徴です。

悪性リンパ腫はステージによって治療法や予後が大きく変わるため、正確な状態の把握が非常に重要となります。

AnnArbor(アン・アーバー)分類

ステージ分類のひとつであるAnnArbor分類は、本来はホジキンリンパ腫のためにつくられたものですが、非ホジキンリンパ腫にも利用されています。また、以下に加えて発汗や寝汗、体重減少といった症状の有無によってAまたはBと分類されます。

Ⅰ期

Ⅰ期は単独リンパ節のみの病変です。リンパ節に病変がなく、それ以外の臓器または部位に限局する病変の場合はⅠEと分類します。

Ⅱ期

横隔膜と同じ側にあるリンパ節の病変が2つ以上ある場合はⅡ期とされます。また、リンパ節の病変と関連する臓器または部位に限局する病変がある場合は、その他のリンパ節病変の有無にかかわらずⅡEと分類します。

Ⅲ期

横隔膜の両側にあるリンパ節に病変がある場合はⅢ期とされます。さらに、リンパ節病変が周囲に進展している場合はⅢE、脾臓の病変を伴う場合はⅢS、その両方の場合はⅢESと分類します。

Ⅳ期

リンパ節病変の有無にかかわらず、リンパ外臓器のびまん性病変(病変が比較的均等に広がっている状態)または播種性病変(種をまいたように病変が全身に広がっている状態)がみられる場合はⅣ期とされます。遠隔リンパ節に病変がある場合も同様です。

Lugano(ルガノ)分類

Lugano分類は、国際悪性リンパ腫会議で作成された分類方法です。こちらもステージ分類に用いられています。

Ⅰ期

消化管に限局した腫瘍で、単発・多発のいずれもⅠ期とされます。

Ⅱ期

消化管に発生した腫瘍が腹腔内に進展した場合はⅡ期とされます。

Ⅲ期

近接臓器または組織の漿膜(臓器や組織を覆う膜)に進展している場合はⅢ期とされます。

Ⅳ期

リンパ外への播種性浸潤、または消化管病変が横隔膜を超えてリンパ節病変を起こしている場合はⅣ期とされます。

悪性リンパ腫の治療方法

悪性リンパ腫の場合は手術を行なうことは少なく、一般的には化学療法や放射線療法が選択されます。化学療法は、悪性リンパ腫の病型や悪性度によって複数の抗がん剤を組み合わせて実施します。放射線療法は病変部の根治を目指して実施されますが、リンパ腫の範囲が限局されているのであれば高い効果を見込むことができます。

免疫療法

光免疫療法は、光をあてることでがん細胞を破壊するという治療法です。その結果として免疫細胞を活性化させる一面も有しているため、広義では免疫療法のひとつといえるでしょう。
他の免疫療法としては、患者さんの体内から免疫細胞を取り出して増殖・活性化させて体内に戻し、がん細胞への攻撃力を高める免疫細胞療法があります。代表的なものに樹状細胞ワクチン療法やアルファ・ベータT細胞療法、ガンマ・デルタT細胞療法などがあり、悪性リンパ腫に対して実施された例も報告されています。

造血幹細胞移植

あらかじめ採取した患者さん自身または他人(ドナー)の造血幹細胞を移植することで、骨髄機能を回復させて正常な血液がつくられるようにする治療を造血幹細胞移植といいます。化学療法や放射線療法を実施しても治癒が難しい場合、または再発した場合などに行われます。

抗がん剤治療

ホジキンリンパ腫に対する抗がん剤治療の場合は、ドキソルビシン、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジンといった抗がん剤を併用する「ABVD療法」が標準的な治療とされています。非ホジキンリンパ腫の場合は、病理組織型や悪性度によって治療内容や抗がん剤の種類が決定されます。
悪性リンパ腫に抗がん剤治療の適応があるのは、悪性度が低い場合のⅢ期およびⅣ期、2つの病変が離れた位置に存在するⅡ期の場合です。また、悪性度が中等度以上の場合はすべての悪性リンパ腫が抗がん剤治療の対象です。

放射線治療

悪性リンパ腫に対する放射線治療は根治を目的として行なわれます。リンパ腫の範囲が限られ連続して存在している部分には、とても高い治療効果が期待できます。
ホジキンリンパ腫の場合はⅠ期またはⅡ期で、前述のB症状や巨大な腫瘍がなければ放射線治療の適応となります。また、非ホジキンリンパ腫の場合は、悪性度が中等度のⅢ期またはⅣ期、高悪性度以外であれば放射線治療の適応です。
悪性度が低ければ、2つの病変が離れているⅡ~Ⅳ期ならば圧迫症状が出ている部位だけに放射線治療を行ないます。

遺伝子治療

がんや白血病、悪性リンパ腫などの腫瘍細胞では、人間が本来持っているがん抑制遺伝子が壊れ、異常な増殖を抑えられなくなっています。そこで、正常ながん抑制遺伝子を投与することで腫瘍細胞の増殖にブレーキをかけ、アポトーシス(自然死)に導こうとするのががん遺伝子治療です。
がん遺伝子治療は抗がん剤治療などと違って大きな副作用がなく、標準治療と併用できることもメリットだとされています。

悪性リンパ腫の再発

治療によってリンパ腫が消失したように見えても、再び出現することを再発といいます。再発の多くはしこりなどの症状が現れることで発見されますが、仮に検査で早期発見できたとしても、それが予後にどう影響するかは不明です。

また、悪性リンパ腫は再発すると以前の病型と異なったタイプに変わる可能性が高いので、組織検査を行なった上で慎重に治療しなければなりません。

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