乳がん

乳がん患者は光免疫療法を受けられるのか?

乳がんの患者さんが国内で光免疫療法を受けるためにはどうすればいいのでしょうか。治療の種類ごとに見ていきましょう。

「光免疫療法(薬品名:リポソーム)」を受けるには

光免疫療法は承認前のがん治療法であることはご存知の方もいることでしょう。しかし、承認に先駆けていち早くこの治療法を患者さんに提供している病院が日本国内にあります。乳がんに対する効果も含め、光免疫療法について相談してみることをおすすめします。

「近赤外線免疫療法(薬品名:IR700)」を受けるには

近赤外線免疫療法も承認前のがん治療法であり、日本国内で治療を受けるには臨床試験に参加する以外に方法はありません。しかし、現時点では乳がんを対象とした臨床試験は予定されておらず、残念ながら乳がんの患者さんが近赤外線免疫療法を受ける手段はないのが現状です。

乳がんの光免疫療法に関する研究について

現在開発が進んでいる光免疫療法は、EGFR(上皮成長因子受容体)を標的とする抗体薬セツキシマブを用いています。乳がんはタイプにもよりますがEGFRの過剰発現が認められるので、光免疫療法の効果を期待することができるでしょう。
また、HER2陽性乳がんに用いられるトラスツズマブと光感受性物質の複合体も実験段階まで進んでいるという情報もあります。臨床開発はまだ先の話になりそうですが、光免疫療法の乳がん治療への応用は間違いなく進んでいくことでしょう。

光免疫療法が受けられる病院について

光免疫療法は、承認前の現時点(2020年3月現在)でもいち早く治療を受けることができる病院があります。
近赤外線免疫療法は、世界中で実用化に向けた臨床試験が急ピッチで進められているところです。有効な成績を収めていることから早期の承認も期待できますが、現時点ではその臨床試験以外に近赤外線免疫療法を受ける手段はありません。

乳がんで光免疫療法を受けた方の声

さまざまながんに効果が期待できるとされる光免疫療法。ステージ4の乳がんで闘病している加奈子さん(仮名)も光免疫療法を受けた患者さんの一人です。

手術や放射線療法など、いわゆる標準治療を受けていた加奈子さんの再発が判明したのは、ホルモン治療を開始して1年と2カ月が過ぎたとき。これまでの治療だけでは足りないと感じた彼女は自身でもインターネットなどで調べ、そしてたどり着いたのが光免疫療法でした。彼女にとって、光免疫療法は生きる希望のひとつとなっています。

そもそも乳がんとは

乳腺に発生する悪性腫瘍が乳がんです。多くは乳管にできますが、比較的おとなしいタイプから進行が早いやっかいなタイプまでさまざまな乳がんがあります。
がん細胞の特徴や広がり方によって分類する方法を組織型(病理型)といい、大きく浸潤がんと非浸潤がんに分けられます。浸潤がんはがん細胞が血管やリンパ管などの周辺組織に広がった状態で、再発や転移の可能性が高まります。また、近年は遺伝子の情報によって乳がんを分類したサブタイプが広く知られるようになってきました。

サブタイプとは

サブタイプはがん細胞の表面に現れる特定のたんぱく質を調べることで判定し、ホルモンレセプター、HER2たんぱく、がん細胞の増殖能力の組み合わせで決まります。
ホルモンレセプターは女性ホルモンに反応する受信装置のようなもので、それによって細胞分裂を促します。したがって、がん細胞がホルモンレセプターを持っていれば女性ホルモンの影響で増殖することになるのです。HER2たんぱくは乳がんを増殖させるたんぱく質で、乳がんの種類によってHER2たんぱくの有無が異なります。

乳がんの症状

早期の乳がんは自覚症状に乏しく、マンモグラフィーによる検診で見つかることが多くあるがんです。進行すると症状が現れはじめ、乳房のしこりやひきつり感、痛みなどがみられます。しこりは他の病気でも生じますが、乳がんの場合はしこりが硬く動きがないのが特徴です。
さらに進行して腋の下のリンパ節に転移すると腫れやしこりがみられ、神経が圧迫されてしびれ感なども現れていきます。

乳がんのステージ(病期)分類

他のがんと同じく乳がんにも進行度を示す分類があり、それをステージ(病期)といいます。ステージは0期からⅣ期までに5段階に分けられ、がんのサイズや性質、リンパ節転移の有無、他の臓器への転移の有無などの条件によって決められます。これによって治療方針や予後の見通しが立つことになるため、ステージは非常に重要な指標であるといえます。

すべての乳がんは0期の非浸潤がん、乳管の中にだけとどまっている状態から始まります。この段階で発見できれば、きちんと取り除くことで抗がん剤なども使わずに根治できる可能性は高いでしょう。
ただ、がん細胞が浸潤(がん細胞が乳管を破って外に広がること)した場合、気を付けなければなりません。浸潤したがん細胞は血管やリンパ管に入り込むことができるので、やがて転移を起こす可能性が高くなっていきます。
また、浸潤がんの周囲に乳管内がんが広がっていくことも多くあります。

0期

乳がんが発生した乳腺の中にとどまっている状態です。極めて早期の乳がんで、非浸潤がんともいいます。

Ⅰ期

がんの大きさが2cm以下で、わきの下のリンパ節には転移していない状態です。つまり、乳房のほかにはがんが広がっていないと考えられます。

Ⅱa期

がんの大きさが2cm以下ですが、わきの下のリンパ節に転移がある状態です。また、わきの下のリンパ節に転移がなくてもがんの大きさが2cm~5cmであればⅡa期に分類します。

Ⅱb期

がんの大きさが2cm~5cmで、わきの下のリンパ節に転移がある状態です。

Ⅲa期

がんの大きさは2cm以下ですが、わきの下のリンパ節に転移があり、それが癒着を起こしたり周辺組織に固定したりしている状態です。また、わきの下のリンパ節への転移がなくても内胸リンパ節(胸骨の内側のリンパ節)が腫れている状態、がんの大きさが5cm以上でわきの下または内胸リンパ節への転移がある状態もⅢa期に分類します。

Ⅲb期

がんの大きさやわきの下のリンパ節への転移にかかわらず、がんが胸壁に固定されている状態です。がんが皮膚の表面まで浸潤してきたり、皮膚が崩れたりむくんだりしているような状態もⅢb期に分類されます。炎症性乳がんもこのステージに該当します。

Ⅲc期

がんの大きさにかかわらず、わきの下のリンパ節と内胸リンパ節の両方に転移がある状態です。また、鎖骨の上下にあるリンパ節に転移がある状態もⅢc期に分類します。

Ⅳ期

がんが離れた臓器に転移している状態です。乳がんは骨や肺、肝臓、脳などに転移しやすいとされます。

乳がんの治療方法

国内におけるがんの標準治療は手術療法、薬物療法(抗がん剤やホルモン剤)、放射線療法の3つとされ、これは乳がんにおいても同様です。ステージや患者さんの状態などから判断して治療方法が選択されることになりますが、複数の標準治療を組み合わせてより高い治療効果を目指す集学的治療が行われることもあります。

手術

乳がんに対する手術は、乳房を残す温存手術と乳房をすべて切り取る切除術の2つが標準的な方法です。

手術を受ける前には、あとで乳房再建を受けるかどうかも検討しておかなければなりません。

手術の目的は居所のがんを取り除くことが第一ですが、切り取ったがん病変を病理検査で詳しく調べ、がんの性質、つまりサブタイプを確定診断することです。

この結果によってその後の治療方針が大きく変わってきます。

抗がん剤治療

乳がんの化学療法には抗がん剤による治療のほか、ホルモン療法、分子標的薬治療の3パターンがあります。

これらは前述のサブタイプをはじめ、乳がんの病期や患者さんの年齢、希望に応じて選択されることになります。

乳がんの多くは、たとえ腫瘍が小さいとしても身体のどこかに目に見えないような微小ながん細胞が隠れている可能性が否定できません。微小な転移のリスクを減らすためにも、化学療法には重要な意味があるのです。

放射線治療

放射線治療はがん細胞が増殖しないよう遺伝子に放射線でダメージを与え、死滅させる局所的な治療法です。

乳がんの手術の後でわきの下のリンパ節に転移があったり、しこりが大きかったりする場合には、再発防止のための放射線治療が必要になります。

また、乳がんの痛みを緩和することにおいても放射線治療は有効とされています。

免疫療法

当サイトで紹介している光免疫療法も広義では免疫療法のひとつです。

新しいがん治療法である光免疫療法は現在も研究・開発が進められており、乳がんに対する現状は上記のとおりです。

このほか代表的な免疫療法のひとつに、患者さん自身の免疫細胞でがんを攻撃する免疫細胞療法があります。具体的にはがん細胞などの異物と戦う免疫細胞を患者さんの血液から取り出し、増殖・活性化させてから体内に戻すという治療法で、大きな副作用がないのも特徴とされます。

例を挙げると、がん細胞などの異物を発見次第攻撃する特性を持ったNK(ナチュラルキラー)細胞を活性化させる「NK細胞療法」などが知られています。

遺伝子治療

がん細胞は放っておくと無限に増殖し、正常な細胞のようにアポトーシス(自然死)を起こすということがありません。

これは、人間が本来持っているがん抑制遺伝子が壊れてしまっているのが原因のひとつと考えられています。

がんの遺伝子治療は、正常ながん抑制遺伝子を投与することでがん細胞の増殖を止め、アポトーシスに導こうとするものです。

がん抑制遺伝子には多くの種類があり、乳がんにおいても特定のがん抑制遺伝子に異常をきたしていることが明らかになってきました。

それを投与することで、乳がんに対する治療効果が期待できるとされます。
※2020年11月時点で、遺伝子治療は保険治療ではなく自由診療となっています。

薬物療法とサブタイプの関係

薬物療法においてどのような薬剤を選択するかは、前述のサブタイプが大きく関わってきます。

現在の乳がん治療ではステージやサブタイプなどから再発の危険性をある程度予測することが可能です。

したがって、再発の危険性が高いサブタイプには再発抑制効果が高い薬剤を使用し、再発の危険性が低いサブタイプにはホルモン剤のみを使用することもあります。

乳がんの転移・再発

肺や肝臓、骨など離れた部位にがんが出現することを転移(遠隔転移)といいます。また、目に見えないような小さながん細胞が初期治療を生き延びて、再びがんが出現することを再発といいます。
遠隔転移の場合はがん細胞がすでに全身に広がっていると考えられ、手術で取り除くことは困難な場合がほとんどです。そうなると化学療法でがんの進行を抑えつつ、症状を緩和させながらがんと長く共存していく道を選択することになります。

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