膀胱がんの患者さんが国内で光免疫療法を受けるためにはどうすればいいのでしょうか。治療の種類ごとに見ていきましょう。
光免疫療法は承認前のがん治療法です。しかし、承認に先駆けて光免疫療法を実施している病院が日本国内にあります。膀胱がんへの効果も含め、光免疫療法は広範囲のがんや多発転移がんへの効果が期待できるとされているため、すでに実施している病院へ相談してみることをおすすめします。
光免疫療法と同じく、近赤外線免疫療法も承認前のがん治療法で、現在は臨床試験が行われている最中です。治療を受けるには臨床試験に参加するしか方法がありませんが、残念ながら膀胱がんの患者さんは対象となっていません。したがって、膀胱がんの患者さんが近赤外線免疫療法を受ける手段は現在のところ存在しないのが実情です。
2020年5月23日現在、膀胱がんの光免疫療法に関する大きな研究成果は発表されておりません。
近赤外線免疫療法は現在、臨床試験が実施されているところで一日も早い承認・実用化が望まれています。しかし、臨床試験の対象になっているのは頭頸部がんや食道がんといった一部のがんのみで、膀胱がんの患者さんは対象になっておりません。残念ながら膀胱がんの患者さんは現在のところ近赤外線免疫療法を受けることはできないのです。
一方、光免疫療法は承認前であっても治療を受けることができる病院が日本国内にあります(2021年3月現在)。詳しくは次のページをご確認ください。
膀胱は骨盤の中に位置し、腎臓でつくられた尿を一時的に溜めておく袋状の臓器です。その膀胱の粘膜に発生した悪性腫瘍が膀胱がんで、日本では男女とも60歳以降に多く発症します。男性のほうが圧倒的に多く、女性の3倍から4倍ともいわれていますが理由ははっきりしていません。
また、喫煙が大きなリスクになると考えられており、仕事で化学薬品や染料などを扱っている人も発症率が高くなっているようです。
膀胱がんには大きく分けて3つのタイプがあります。
肉眼的には表面がブツブツとしたがんで、膀胱の内側に向かって突出していきます。がん自体は粘膜にとどまっており、転移や浸潤の可能性は低いと考えられます。
表在性膀胱がんとは異なり表面はなめらかです。しかし膀胱の壁を突き破って周辺の組織に浸潤し、転移しやすいというやっかいながんです。
膀胱内の表面には明らかな腫瘍がみられませんが、粘膜の壁に沿って悪性度の高いがん細胞が広がっているのが上皮内膀胱がんです。放置していると浸潤性がんに変わっていきます。
膀胱がんは比較的早期から症状が出やすく、代表的な症状は血尿です。痛みが伴わないこともあり、頻尿や残尿感といった膀胱炎のような症状がみられることもあります。そのような症状を抗生剤で治療しても改善しない場合は膀胱がんが疑われることになります。
膀胱がんが進行すると尿管が閉塞して水腎症を起こし、背中や腰に鈍い痛みが出てくるようになります。尿管結石なども同じような症状のため判別が重要です。
他のがんと同様に、膀胱がんも進行の度合いをステージ(病期)で示します。具体的にはがんの深さや広がり方、リンパ節や他の臓器への転移の有無などによって、0a期・0is期からⅣ期までの6段階に分類されます。
実際の治療法は前述のがんの種類によって変わります。たとえば再発の危険性は表在性がんと浸潤性がんでは大きく異なりますので、現在のステージだけではなくどの種類のがんなのかを正確に把握しなければなりません。
膀胱がんにおいても手術療法、化学療法(抗がん剤)、放射線療法といった標準治療が行われます。
まず膀胱がんと診断された場合は尿道から内視鏡を入れて腫瘍を切り取り、それを詳しく調べます。その結果、早期がんの場合は再発予防のため抗がん剤を膀胱内に投与しますが、転移の可能性が高い場合は膀胱をすべて摘出し、新たに尿の出口をつくることもあります。
手術が困難な場合は化学療法と放射線療法を組み合わせて治療を行ないますが、すでに他の臓器に転移している場合は抗がん剤による全身療法などを選択します。
上記の表在性膀胱がん、上皮内膀胱がんの場合は、膀胱鏡と電気メスでがんを取り除く「経尿道的膀胱腫瘍切除術」を行なうことで膀胱を温存できます。
しかし、浸潤性膀胱がんの場合は膀胱すべてと周囲のリンパ節、隣接する臓器を摘出するのが標準治療となります。
膀胱を摘出した場合は、尿の出口とためておく場所をつくる手術を受けなければなりません。この方法には人工膀胱などいくつか種類があり、自身の生活スタイルに合わせて選択する必要があります。
再発リスクが高い表在性膀胱がんや上皮内膀胱がんの場合は、BCG注入療法が選択されます。
また、がんがリンパ節や他の臓器に転移している場合は全身的な抗がん剤治療を行ないます。転移がなくてもステージⅢであれば、再発予防を目的として手術の前後に抗がん剤治療を行なう場合があります。
膀胱がんは初期であっても再発を繰り返す可能性が高いため、合併症などで治療が困難な場合以外は再発予防のための抗がん剤治療を受ける必要があります。
膀胱がんの標準的治療は手術とBCG注入療法、抗がん剤治療とされており、放射線治療は含まれていません。
しかし、浸潤性膀胱がんでも患者さんが膀胱温存を強く希望された場合、膀胱外へのがんの進展がなくサイズも小さく数も少ないといった条件がそろえば、手術と抗がん剤治療との三者併用で放射線療法を行なうこともあります。
具体的にはまず手術でがんをなるべく小さくし、抗がん剤治療と同時に放射線療法を行なうという流れです。
当サイトで紹介している光免疫療法も、その名が示すとおり免疫療法のひとつです。
ただ、光をあててがん細胞を破壊するという意味では他の免疫療法と一線を画すといっていいでしょう。膀胱がんに対する光免疫療法の現状は上記のとおりです。
このほか、患者さん自身の血液から免疫細胞を取り出して増殖・活性化させ、パワーアップした免疫細胞を体内に戻してがん細胞を攻撃する免疫細胞療法があります。
代表的なものに、Tリンパ球にがん細胞を攻撃するよう命令する樹状細胞を活性化する「樹状細胞ワクチン療法」や、がん細胞などの異物を自立的に攻撃する「NK(ナチュラルキラー)細胞療法」などがあります。
がんの遺伝子治療は、正常ながん抑制遺伝子を投与することでがん細胞の増殖にブレーキをかけ、アポトーシス(自然死)に導くという治療法です。
膀胱がんは近接臓器に浸潤・転移しやすく、手術が困難になるケースも多くあります。
手術できたとしても膀胱を摘出した場合は生活の質も低下し、抗がん剤治療も副作用をともなうため治療の負担は大きくなってしまいます。
遺伝子治療は人間が本来持っているがん抑制遺伝子の力を利用するため副作用が少なく、身体的負担を抑えながら治療できるとされています。
※2020年11月現在、自由診療となっています。
リンパ節や他の臓器に転移している場合は、膀胱をすべて摘出しても高い治療効果を期待することはできません。抗がん剤による全身療法を行なって、できる限り普段の生活を維持できるようにします。
また、膀胱がんは何度も再発するのが特徴で、再発を繰り返すほど次の再発率も高くなります。再発を繰り返すうちにがんの性質が変わることもあり、抗がん剤が効かなくなったり広範囲に再発するようになったりすると治療は困難になっていきます。
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