光免疫療法の研究開発は現在も米国を中心に進められていますが、日本においても臨床試験が国立がんセンター東病院(千葉県柏市)で始まりました。メディアでも情報が流れるようになったため全国から大反響を呼び、日本国内での1日も早い実用化、治療開始を望む声が高まっています。
あらゆる薬や治療法にいえることですが、これらは臨床試験を経なければ承認を受けて実用化されることはありません。いかに光免疫療法が有効な治療法だといっても例外ではなく、臨床試験のプロセスをクリアすることは必要です。まず、その臨床試験の一般的な流れについてお話しします。
少数の健康成人などについて、主に安全性や薬物動態などを調べる試験です。
比較的少数の患者さんについて、有効性や安全性などを調べる試験です。
多数の患者さんについて、標準的な薬や治療法などと比較して有効性や安全性を確認する試験です。
先行する米国ではすでにフェーズ2が終わっており、米国、日本、その他各国でフェーズ3に進む予定です。米食品医薬品局(FDA)は承認審査を迅速に進める方針を発表しており、2年以内に実用化される見通しも出てきました。
現在の治療対象は、日米とも再発頭頸部がん(喉、口、耳、鼻、顎など)ですが、いずれは肺がん、大腸がん、乳がん、すい臓がん、前立腺がんなどにも広げたいと考えられています。
光免疫療法の研究に携わる小林久隆先生によると、光免疫療法をさらに発展させ、1カ所のがんを1回治療するだけで全身の転移がんも治療し、ワクチン効果によって再発もさせない、という画期的な研究開発にも取り組んでいるということです。
さて、日本での光免疫療法の実用化に向けた動きはどうなっているのでしょうか。
日本では、2018年より国立がんセンター東病院(千葉県柏市)で臨床試験が行なわれています。対象は再発頭頸部がんの患者さんで、同センターによると「光免疫療法は従来の治療法とは異なる新しい選択肢。その技術は将来さらに発展する可能性を秘めている」とされます。
※参考サイト:国立がんセンター東病院公式
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/division/clinical_trial/patient/head/20181226104430.html
臨床試験が順調に進めば、今後は世界中で行なわれる国際共同試験(フェーズ3)で効果を確かめ、できるだけ早い実用化が目指されます。光免疫療法に用いられる抗体の開発プロセスを短縮化できることもこの治療法の特長で、国内における医療費削減、特に急速に高騰化する薬剤費用の抑制に貢献することも期待されています。
光免疫療法は、現在も行なわれている腹腔鏡下手術やロボット手術などの高度な外科手術を超えるがん治療となる可能性もあります。
早期の胃がんや大腸がんは、転移のリスクも少なく内視鏡や腹腔鏡下手術のような縮小手術(切除範囲を少なくして身体的負担を減らす手術)が中心です。この手術には高度な技術を要しますが、光免疫療法は光をあてるだけでがんを治療できるかもしれません。
心臓の合併症があるなど手術のリスクが高い場合や、手術によるがんの残存や転移のリスクが低い場合は、オプションとして光免疫療法を選択することも可能です。このように、光免疫療法は患者さんの選択肢を大きく広げることができるのです。
日本で光免疫療法の臨床試験の対象となっているのは、頭頚部(のど、口、耳、顎など)にできる扁平上皮がんという種類のがんで、これまで他の治療法で効果がなく再発してしまった患者さんです。まずは光免疫療法が安全に行えるか確認する試験になります。
理論的には大腸がんや胃がんも光免疫療法の対象になりますが、今回は安全性を確認する臨床試験(フェーズ1)のため、光がきちんと安全に届く体表面のがんに限定されています。したがって、内視鏡で光をあてるようながんは対象となっていません。
今回の臨床治験の難しいところは、新薬の臨床試験であると同時に、新しいレーザー医療機器の臨床試験でもある点で、このふたつをまとめて行なう臨床試験は国内では過去にほとんど例がありません。ですが、国立がんセンター東病院では食道がんのレーザー治療において国内の大多数を手がけており、臨床試験の実績もあります。技術的にも馴染みがありますし、レーザー治療を行なうための管理区域も整備されていますので、今回の光免疫療法の臨床試験には絶好の舞台といえるでしょう。
※参考サイト:国立がんセンター東病院公式
https://www.ncc.go.jp/jp/ncce/clinic/esophageal_surgery/resident/index.html
米国学会の発表によると、フェーズ1では再発頭頸部がんの患者さん15人を対象に臨床試験を行ない、14人のがんが3割以上縮小し、そのうち7人は画像上がんが消失したといいます。初期の安全性を確認する臨床試験の成績としては期待以上の結果だといえるでしょう。フェーズ2は詳細を解析中ですが、フェーズ1と同様の結果を得られたものと思われます。
※参考:朝日新聞DIGITAL 2019年03月11日
https://webronza.asahi.com/business/articles/2019030600003.html?page=2
日本では今後フェーズ2の臨床試験は実施せず、世界中で行なわれる国際共同臨床試験のフェーズ3に進むことになりそうです。その試験に合流する時期にもよりますが、日本人のがん患者さんも数十人が参加することになる見込みです。
光免疫療法は米国立保健研究所が協力に推進しているため、早期に承認される可能性もあるため、実用化が早まる可能性も期待できるかもしれません。
前述のように早期承認と実用化が望まれる光免疫療法ですが、それに先駆けて現在は以下のクリニックで自費診療による光免疫療法を受けることができます。いずれのクリニックも、光免疫療法をはじめとしたさまざまながんの先進治療を行なっています。
クリニックで行われる治療は保険適用外の自由診療のため、治療費は全額自己負担となります。がんのステージや症状により、治療費用や治療期間、治療クール数は異なります。詳しくは医師へご相談ください。
また、副作用や治療によるリスクなども診療方法によって異なります。
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