頭頸部がんに対する新しい治療として期待される光免疫療法の現状を紹介しているページです。
この記事は、下記の内容を参考に作成しています。
東京新聞|頭頸部がん 保険適用1年 「光免疫療法」手探り続く 患者ら期待 副作用検証を
(https://www.tokyo-np.co.jp/article/160307)
頭頸部がんとは、わかりやすくいうと「顔面から頸部までにできたがん」を指します。具体的には鼻・副鼻腔、口腔、咽頭・喉頭(のど)、唾液腺、甲状腺にできるがんを総称して頭頸部がんとして扱っています。
頭頸部がんは、大腸がんや胃がんなど他のがんと比較すると発生頻度が少ないがん。ただ全体数は少ないものの、頭頸部がんに含まれるものは舌がんや上咽頭がん、鼻・副鼻腔がん、歯肉がん、甲状腺がんなど非常に種類が多い点も特徴です。
光の作用によってがん細胞を破壊する治療法「光免疫療法」が公的医療保険適用となって1年あまりが経過しました。手術や放射線治療など従来の治療ができない頭頸部がんに対しては、全国でおよそ40の病院で実施が可能となっています。
光免疫療法による治療は、「アキャルックス」と呼ばれる薬剤を使用します。がん細胞に結びつく抗体と光に反応する色素「IR700」とアキャルックスを組み合わせ、2時間以上の時間をかけて投与します。24時間後にがん細胞と抗体がくっついた状態でレーザー光を当てると、IR700が反応してがん細胞を破壊するという流れとなっています。
治療を行っても効果が不十分な場合は4週間以上の期間をあけた上で最大4回まで治療を受けられます(保険適用)。
楽天メディカルによると、2021年末までに光免疫療法治療はおよそ40回実施されています。これまでに光免疫治療を受けたケースの中で2021年12月に神戸で光免疫療法を1回受けた女性は、2020年春頃に中咽頭がんの診断を受け、放射線による治療と抗がん剤治療を受けたものの再発。舌根に腫瘍ができ、手術を行うと発声できなくなる可能性があったため光免疫療法が実施されました。一時はチューブで栄養を摂取していた時期があったものの現在は会話や食事ができているとのこと。
その反面、光免疫療法を受けたことによって病状が悪化した例もあります。3回の光免疫療法を受けた男性は、1回目の照射後には頬の腫瘍の7割が壊死していると確認されたものの、3回目の治療を行った後には腫瘍が急速に大きくなりました。
楽天メディカルに対し、厚生労働省からアキャルックスの製造販売が承認されたのは2020年9月。これは第3相治験の結果が出る前であり、承認は安全性や有効性など必要とされる調査を続ける、という条件がつけられていました。同年の11月には保険適用となったものの、第3相治験が海外で続けられているという状況です。
海外で実施された治験では、対象30名のうち4人でがんが完全に消失し、9人でがんが縮小したことが確認されたとのこと。しかし、3人に痛みや気道閉塞なども報告されています。光免疫療法は症例数がまだ少なく、治療は手探りの状態であり、光を当てる量などわからないことがまだ多いという状況。また、治療後に痛みを訴える患者も多いこと、また治療後にはしばらく直射日光を避ける必要があるなど治療には慎重な判断が必要と考えられています。そのため、それぞれの病院で情報を共有し、治療後の検証を進めていくことが重要であるとされています。
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