2020年4月16日に、株式会社島津製作所と国立研究開発法人国立がん研究センターに、光免疫療法に関する計測技術を臨床に応用するとして共同研究契約を結んだと発表しました。共同研究の内容を詳しくみていきましょう。
参照元:株式会社島津製作所公式HP/国立がん研究センターと共同研究契約を締結「光免疫療法」に関する計測技術の臨床応用へ
2020年4月16日に、株式会社島津製作所と国立研究開発法人 国立がん研究センターに、光免疫療法に関する計測技術を臨床に応用するとして共同研究契約を結んだと発表しました(IR700を使用した光免疫療法は他の光免疫療法と区別して近赤外線免疫療法というため、以下、近赤外線免疫療法と表記します)。
2020年4月1日より同センターにある東病院の外科・内視鏡治療開発センター内視鏡機器開発室に開発拠点を設置し、近赤外線免疫療法に関する計測技術の臨床応用に向けた研究を共同で実施します。
両者が培ってきたノウハウを研究で互いに活かしながら今後の共同研究では、東病院の近赤外線免疫療法における豊富な臨床経験および島津製作所の技術を活用することにより、光免疫療法の早期実現と普及に貢献していきます。
現在、がんの治療法は抗がん剤・病変部位の切除手術・放射線療法の3本柱で形成されています。現在近赤外線を利用してがん細胞を攻撃するという既存の技術を新しい技術で応用していく近赤外線疫療法という新たな治療法が注目されています。
がん細胞に特異的な抗体と光刺激により変質するIR700という物質を点滴によりがん細胞まで運搬し、がん細胞と結合させます。それに光を照射することでがん細胞に物質変化をおこさせ、がん細胞を破壊する治療法です。
がん細胞以外にダメージはなく、正常細胞は通常通りの活動を継続することが可能であるため従来のがん治療よりも副作用が少ないのがポイント。また使用する機器や薬品にそれまでのがん治療よりコストがかからないため、患者にとっても身体と金銭面の両面から負担の少ない治療といえます。
※2020年3月時点でこの赤外線を用いた免疫療法は、IR700という物質を用いた近赤外線免疫療法とリポソームを用いた光免疫療法とあります。当サイトでは、国立がんセンターが現在研究中のIR700を用いた免疫療法を近赤外線免疫療法として区別して表記します。
株式会社島津製作所(以下、島津製作所)は日本を代表する産業機器を開発している会社です。医療の分野では血管造影、PET、X線といった医療用画像診断機器を開発し、高い品質で患者に負担の少ない診断や治療を実現させています。
今回の共同開発では、島津製作所が誇る分析機器を利用し光免疫療法を臨床の現場で実用化するといっています。
光免疫療法において、光を取り込んだがん細胞は蛍光反応が小さくなっていきます。その化学反応の中で、がん細胞の衰退がわかります。その反応から治療の効果や進捗を評価することが可能です。
今回、共同研究ではがん細胞の化学反応進行状況を可視化可能になるようにカメラシステムを利用し行っていきます。また、細胞変化を起こすと血液や尿の状態も変化していきます。その血液や尿の分析をしながら評価の裏付けを行っていきます。
細胞は非常に小さく、取り残しや見落とされることがあります。治療患部の状態を可視化し、記録を可能とします。一般的に早期がんや見つけにくいとされるがんなどに対してもアプローチが可能になることも期待できます。
共同研究を行うということは、現場でのニーズを測定技術に応用できるうえ、現場のスタッフは要望や質問を技術者へ投げかけることが可能です。
本研究が進み、がんの可視化が可能となれば、より正確にスピーディーな患者に負担の少ない治療が行うことができ医療技術の向上が実現します。治療評価が随時行われることになりますので治療のレベルも上がるでしょう。
いずれにせよ、がん治療の歴史を塗り替え、がんとの向き合い方が変わる革新的な出来事であることに間違いはありません。
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