ドイツと日本の技術で行なう光免疫療法の効果と副作用

近赤外線を利用してがん細胞を死滅させるという、新しいがん治療である光免疫療法の手法や効果、考えられる副作用についても説明していきます。

光免疫療法の手法とがん治療への効果

光免疫療法の手法とがん治療への効果

光免疫療法における近赤外線や低反応レーザーの照射方法は、がんの部位や大きさによって変わってきます。身体の外から照射する方法もあれば、内視鏡を使うこともあります。ある程度大きいサイズのがんの場合は、がんのかたまりにチューブを到達させて光ファイバーを入れ、がんの内側から照射します。

がん光免疫療法を開発した米国立衛生研究所主任研究員の小林久隆氏によると、光免疫療法は近赤外光線や低反応レーザーが届けば治療できるので、皮膚がんのような身体の表面に近いがんだけではなく、食道がんや膀胱がん、大腸がん、肝臓がん、すい臓がん、腎臓がんなど、全身のがんの8~9割はこの治療法を行なえると考えられています。
参考サイト:毎日新聞2018年1月13日(https://mainichi.jp/articles/20180112/k00/00e/040/343000d)

最初の臨床試験では頭頚部がん、具体的には口腔内のがん、咽頭部や鼻のがんなど食道より上に発生するがんが選択されましたが、内視鏡などを使わなくても身体の外から光をあてることができるというのが主な理由です。かつては身体の外部から光をがんにあてる「光動態治療」があり、がん細胞を選択的に攻撃することが難しかったために成功しませんでしたが、その治療経験のある医師が多いことも考慮されたようです。

光免疫療法によってがん細胞を死滅させることができるのは、先に述べてきた通りです。しかし、光免疫療法は驚くことに光をあてたがんだけではなく、別の場所に転移したがんにも効果があるのです。

転移がんにも効果を発揮する

転移がんにも効果を発揮する

光免疫療法では転移がんにも同じように光をあてる手法が取られますが、この方法でがん細胞を破壊すると、そこからさまざまながん抗体、つまりがんの目印が一斉に露出します。

正常な細胞は治療の影響を受けていないので、近くの正常な免疫細胞がこの抗原を取り込んでがんの情報をリンパ球に伝えます。そうするとリンパ球は活性化して分裂し、その抗原を持つ転移がんを攻撃しに向かうわけです。このように、光免疫療法は転移がんに対する免疫力を高めることもできるのがわかります。

制御性T細胞の働きを抑える効果も

また、光免疫療法はがん細胞のみを破壊するだけではなく、制御性T細胞の働きを抑えることもできます。制御性T細胞は、健康な状態であれば過剰な免疫反応を抑える働きを持っていますが、がんが進行すると増加し、がん細胞を攻撃するはずの免疫細胞の働きを抑えてしまいます。

光免疫療法は、光感作物質を付加した抗体を制御性T細胞に結合させ、近赤外線や低反応レーザーをあてて壊すことができるのです。すると、がん細胞の近くにいる免疫細胞は抑制が解除され、活性化してがん細胞を攻撃します。さらにその免疫細胞は血流に乗って全身を巡り、転移がんへの攻撃も開始します。

がんの近くにいた免疫細胞はがん細胞を攻撃するようにインプットされていますので、免疫の働き過ぎが原因の自己免疫疾患のような副作用も少ないと考えられます。従来からの免疫療法は自己免疫疾患などの副作用が問題ですが、ここも光免疫療法の大きなメリットといえるでしょう。

上記の2つの方法のうち、制御性T細胞を破壊するほうが転移がんへの効果が大きいことがわかっています。光免疫療法が広く実用化された場合は、がん患者さんの症状や進行の具合いに応じながら、この2つを組み合わせて治療することになるでしょう。

がんの三大療法との違い

このように、身体的負担や副作用が付き物の標準治療「手術療法」「放射線治療」「抗がん剤治療」とは違って、光免疫療法は従来のがん治療の常識を覆す可能性を秘めています。

光免疫療法は、従来の治療にもいえる「直接がんを切除する/破壊する」力と、免疫療法の「破壊されたがんを免疫細胞が覚えて再度攻撃する」力を組み合わせた、新たながん治療であるといえるかもしれません。

低反応レベルレーザー光線(LLLT)

低反応レベルレーザー治療(LLLT) 引用元:青木優美クリニック公式サイト(https://aoki-yumi-clinic.or.jp/cancer/photoimmune/index.html)

低反応レベルレーザー光線(Low reactive Level Laser Therapy:LLLT)は、静脈内や間質(組織)内、関節内における光線力学的レーザー治療を目的としたシステムです。

もともとは1960年代にロシアで開発されましたが、ドイツの科学技術によって大きく進歩し、各国において数多くの疾患に対する高い治療実績を残しています。しかし日本では非常に新しい存在であり、医療の現場においてはほとんど前例がありません。

低反応レベルレーザー光線は、病巣を焼き切るような高出力レーザー治療に用いられるものとは違い、手をかざしてもほとんど熱さを感じない出力のレーザー光です。音も熱も振動も発生せず、患者さんへの負担が少ないという特長があります。

国内で光免疫療法を受けることができる医療機関はごく限られますが、この低反応レベルレーザー光線を用いた光免疫療法を実施している医療機関があります。

光免疫療法とリポソームの関係

光免疫療法には、リポソームの技術が大きく関わっています。リポソームは日本の熊本大学で長く研究が続けられてきました。特にリポソームを用いた薬物の体内動態の制御に関して、リポソームの抗腫瘍活性という研究がこの光免疫療法にも大きな福音をもたらしました。

がん細胞のみに到達するリポソーム

リポソーム 引用元:青木優美クリニック公式サイト(https://aoki-yumi-clinic.or.jp/cancer/hybridliposome/index.html)

正常な細胞と同様に、がん細胞も自己の分裂や増殖のためにはエネルギーが必要ですが、がん細胞は周囲の毛細血管から新たに「新生血管」をつくり出し、そこから酸素や栄養を取り込んでいます。新生血管は普通の細胞の血管よりも壁が薄くて目が粗く、100~200ナノメートル程度のごくわずかな隙間が空いています。

抗がん剤や先進医療に用いる遺伝子もそうですが、光免疫療法に使用する光感作物質は新生血管の隙間よりもさらに小さく、通常で1ナノメートル以下の低分子です。したがって、この大きさのまま投与すると血管から漏れてしまい、正常な細胞にも届いてしまうことになります。抗がん剤が正常な細胞にダメージを与えて副作用をもたらすのはこのためです。

リポソームは、光感作物質のような薬剤が普通の血管からは漏れずに新生血管からのみ漏れるように、100ナノメートル程度というごく小さいサイズのカプセル状のものに包み込んだものです。そのカプセルは細胞膜や生体膜の成分であるリン脂質でできているので、人体に害はありません。

リポソーム化された光感作物質は普通の血管から漏れることなくがん細胞に集中的に蓄積され、そこで漏れた薬剤も再び普通の血管に戻ることなく、がん細胞に留まるのです。

米国を中心に研究開発が進められている光免疫療法は「近赤外線免疫療法」ともいわれメカニズムは同じですが、このリポソームを利用した光免疫療法とは一線を画すといってもいいでしょう。

光免疫療法のリスクやデメリットは

光免疫療法のリスクやデメリットは

免疫療法はがん治療の未来を変える可能性を秘めた、革新的な治療だといっても過言ではありません。

しかし、何といっても新しい治療法であるがゆえに、承認までは時間がかかります。リスクやデメリットという表現は相応しくないかもしれませんが、理論的には有効であっても、それを裏付けるための治療実績がないというのは現状ではやむを得ないことでしょう。

もちろん、副作用が100パーセント起こらないという治療法は存在しませんし、治療行為の手技に関するリスクはあります。例えば以下のような例です。

  • 点滴の際に、まれに皮下血腫や神経損傷などの合併症が起きる
  • 治療後に一過性の発熱や倦怠感などが起きる

しかし、こういった現象は光免疫療法に限ったことではなく、通常の医療行為でも頻繁に起こり得ることです。むしろ、がんの標準治療や他の免疫療法に比べれば、がん細胞以外を傷つけない光免疫療法の副作用は抑えられているといえます。

2021年3月現在、日本国内で光免疫療法を受けられるクリニック

日本国内で光免疫療法を受けられるクリニック

2021年現在、国内で光免疫療法を受けられるクリニックは限られます。いずれのクリニックも、光免疫療法をはじめとしたさまざまながんの先進治療を行なっています。

クリニックで行われる治療は保険適用外の自由診療のため、治療費は全額自己負担となります。がんのステージや症状により、治療費用や治療期間、治療クール数は異なります。詳しくは医師へご相談ください。

また、副作用や治療によるリスクなども診療方法によって異なります。

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