がんの光免疫療法の最新情報

新しいがん治療法「光免疫療法」

「光をあててがんを治す」——そんな夢のような治療法が今、世界中から注目を集めています。

その治療法とは「光免疫療法」。人間の身体に害のない近赤外光線や低反応レーザーを照射してがん細胞を消滅させるという、これまでにはなかった新しい治療法です。

光免疫療法の登場

光免疫療法の登場

光免疫療法、別名「近赤外線免疫療法」とも呼ばれるこの治療法は、米国立がん研究所(NCI)の日本人研究者、小林久隆先生が開発しました。実際のがん患者さんを対象とした臨床試験も順調に進んでおり、2~3年後の実用化が目指されているということです。

現在、日本でのスタンダードながん治療には「手術療法」「放射線療法」「化学療法」の3つがあり、これらは標準治療として「がんの三大療法」とも呼ばれています。

三大療法は長きにわたって多くのがん患者さんに選択され、豊富な実績を上げてきました。現在でもその進歩は続いていますが、手術は身体への負担が大きく、放射線や抗がん剤は副作用があり、がんの転移や再発防止などに課題があることも事実です。

これに対して、小林先生が開発した光免疫療法はがん細胞を消滅させる効果が極めて高く、理論上はほとんどのがんを治療できます。治療が困難な転移がんにも有効で副作用が少なく、さらに必要な機器や薬品も他のがん治療に比べて安価なので、世界中で問題となっている医療費の削減にも大いに貢献することが期待されています。

オバマ元アメリカ大統領が2012年の一般教書演説でこの治療法に言及し、米国の偉大な研究成果だと世界に発信したことを覚えておられる方も多いでしょう。その後も研究開発は順調に進み、実用化に向けて大詰めを迎えているところです。

光免疫療法の具体的な手法

光免疫療法の具体的な手法

小林教授が提案した光免疫療法は、がん細胞にだけ選択的に結合する作用を持った抗体を利用します。その抗体に、近赤外線によって化学反応を起こす特殊な物質をくっつけて、静脈注射で体内に投与します。すると抗体はがん細胞に届いて結合し、そこに近赤外光線を照射すると化学反応を起こしてがん細胞が破壊されるというメカニズムです。

近赤外線は、波長が可視光と赤外線の中間に位置する光です。身近な例でいえば、テレビなど一般家電のリモコンなどにも利用されています。光免疫療法に用いる近赤外線は、波長が最も短くてエネルギーが高い光です。体内に投与する抗体に付加する物質は「IR700」という色素の一種で、この光エネルギーを吸収する性質を持っています(光感作物質)。

光エネルギーで化学反応を起こしたIR700は、がん細胞の膜にあるタンパク質を変性させ、細胞膜の機能を損なわせます。その結果、がん細胞は約1~2分という短時間で破壊されることになるのです。

その様子を顕微鏡で見ると、光があたったがん細胞がまるで風船が割れるように破裂していくといいます。

副作用が少ない

注目すべきは、光免疫療法に副作用がほとんどないことが確認されている点です。治療においては、がん細胞以外の正常な細胞には抗体が結合しないので、近赤外光線があたったとしてもダメージはありません。また、抗体が結合したがん細胞でも近赤外光線があたらなければ破壊されません。

つまり、抗体が結合して、かつ光があたったがん細胞だけを破壊するという治療法なのです。がん細胞に対してこれほど選択性が高い治療法は、過去には存在しませんでした。

光免疫療法が確立された経緯

この光免疫療法を開発した米国立がん研究所(NCI)の小林久隆先生は、長年にわたって免疫抗体の研究を続けてこられました。お若い頃は「これだけ抗体ががん細胞にだけ結合するならば、抗体に薬剤や放射性同位元素を付加してがんに届かせることができれば治療が簡単にできるはずだ」と考えたそうです。

現在のがん治療においては、放射線にも抗がん剤にも少なからず副作用があり、正常な細胞にも悪影響を及ぼします。そういった安全性にも多くの課題が残されており、いまだにがん患者さんを完全に治癒させるまでには至っていません。

そこで小林先生は、がん細胞だけに作用して正常な細胞には影響がない治療ができないかと考え始めたのです。まずは、蛍光試薬を用いてがん細胞だけを光らせることが試みられました。その研究は成功し、エネルギーががん細胞からのみ光として放出されていることが証明されました。

そのエネルギーをうまく転用してがん細胞だけを死滅させることができないか、さまざまな薬剤と光の組み合わせが研究され、最終的に近赤外線にたどり着きました。

この仕組みで正常な細胞にダメージを与えずにがん治療を行なうためには、身体の奥まで透過する近赤外線が必要です。その光を吸収するさまざまな化学物質を、数多くの方法で抗体に結合させることが繰り返し試された結果、IR700と抗体の組み合わせが最も効率よくがん細胞を死滅させることができるということがわかったのです。

光免疫療法の今

それでは、ここからは光免疫療法の現状がどうなっているのかお話していきたいと思います。

まずは国内で行なわれている光免疫療法について、詳しい手法や期待できる効果、従来のがん治療との違いなどを、現場で導入されているドイツの治療技術にも触れながらお伝えします。

さらに、実用化に向けた流れの現状や臨床試験の状況や、どうしても気になる治療の費用、そして日本で受けることができる光免疫療法の特長についても探っていきます。

光と薬の組み合わせでがん細胞をたたく、光免疫療法(イルミノックス治療)と呼ばれる、新しいがん治療が世界に先駆けて日本で承認、保険適用となりました。特定の光に反応する薬を患者さんに投与した上で、がんの患部に光を当て、がん細胞だけをピンポイントで破壊するというしくみとなっています。1回の治療費は600万円程度ですが保険適用となるため、患者さんの負担は抑えられます。

がんの転移や再発防止も期待できるとされる光免疫療法の専門外来が、神戸・ポートアイランドの神戸大学病院国際がん医療・研究センター(ICCRC)に新設。光免疫治療の専門組織としては兵庫県内で初。専門外来の診察で適性を見極め、適用外となる場合は治療法を探る措置が採られるとのこと。「症例を重ねることで治療の精度を高めたい」との抱負を述べています。

がん光免疫療法(イルミノックス治療)に関してのよくある質問を、国立がん研究センターがQ&A方式で回答。例えば治療のしくみや、対象となるがんの種類、治療を受けるための方法や条件、ほかの治療方法との関係、現状の頭頸部がんの治験の成績といった事柄について、それぞれ回答がなされています。ぜひ、参考にしてみてください。

2021年5月、神戸大病院にて実施された、兵庫県初となる光免疫療法の模様をレポート。また、光免疫療法が現状抱えている問題や課題などについても取り上げてご紹介。臨床試験の結果がまだまだ少ないこと、治療対象が一定の条件に合致した頭頸部(とうけいぶ)がんに限られていること、実施できる医療機関が全国でも約20施設に限られていることなどがあります。

ドイツと日本の技術で行なう光免疫療法の効果と副作用

現在、承認に先駆けて日本国内で受けることができる光免疫療法には、ドイツで進歩した低反応レベルレーザー光線と、熊本大学で研究されたリポソームの技術が大きく関与しています。それらはどのような技術なのでしょうか。

ここでは、いわゆるがんの標準治療とは大きく異なるメカニズムを持った光免疫療法の具体的な手法や、期待できる治療の効果について探っていきます。そして、がん治療にはどうしてもついてくる心配な副作用についても把握しておきましょう。

光免疫療法の実用化の流れや治験の事例

世界中の患者さんが待ち望んでいる光免疫療法の承認と実用化。その実現には臨床試験、いわゆる治験を実施して有効な治療成績を積み上げていくほかに方法はありません。光免疫療法は、現在のがん治療の最前線で用いられている高度な外科手術を超えるような治療効果を期待されていますが、実際のところはどうなのでしょうか。

ここでは国内外における実用化に向けた流れや、治験の事例はどのような結果だったのかも見ていきましょう。

光免疫療法にかかる費用や保険診療の適用など

がん治療に限ったことではありませんが、新しい治療法と聞くと、期待と同時に治療費のことが気になるのは仕方のないことです。現時点では光免疫療法は未承認、つまり保険適用ではないということですから、費用が心配なのはなおさらですね。

そこで、実際にはどのくらいかかるのか、他のがん治療法と比較してどうなのか、光免疫療法を費用面から見ていきましょう。医療費を抑えることができるケースや、保険適応の可能性についても言及しています。

光免疫療法と近赤外線免疫療法との違い

米国発、楽天メディカル社のバックアップで注目を集めている光免疫療法は「近赤外線免疫療法」とも呼ばれています。実は、現在国内で受けることができる光免疫療法とは理論は同じでも手法が異なります。

国内の光免疫療法は、先にお伝えしたとおりドイツと日本の技術が活きている治療法。具体的にはどのような違いがあり、どのような効果につながっていくのかを探ってみましょう。ポイントは照射する「光」の違いと投与する「薬剤」の違いです。

島津製作所と国立がん研究センターが共同研究

早期の承認を目指す光免疫療法の臨床試験が急ピッチで進められていますが、この臨床試験の特殊なところは、治療技術の臨床試験であると同時に光を照射する治療機器の研究・開発にもかかっていることです。

そこで、臨床試験を実施している国立がん研究センターは医療機器メーカー島津製作所と共同研究契約を締結しました。光免疫療法に関する研究を共同で実施することで、対象となるがんの状態を可視化し、治療の効果を評価する技術の確立を目指しています。

近赤外線免疫療法の医薬品「ASP-1929」が早期承認の可能性あり

去る2020年5月29日、再発頭頸部がんに対して研究開発が進んでいる医薬品「ASP-1929」が条件付き早期承認制度の対象として厚生労働省の通知を受けたことが発表されました(※)。ASP-1929は近赤外線免疫療法に用いられる医薬品で、楽天メディカルジャパン株式会社の独占的ライセンスのもとで積極的な臨床試験が実施されているところです。

光免疫療法と並んで新しいがん治療として期待が寄せられる近赤外線免疫療法、早ければ年内にも実用化の可能性がみえてきました。近赤外線免疫療法のメカニズムと併せて、ここで詳しくみておきましょう。

※参照元:楽天メディカル/Press Releases

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