世界中が注目する中、承認に向けて研究開発が進む光免疫療法。
光免疫療法は承認前の新しいがん治療法ですが、2021年5月時点、一般の方でも日本国内で受けられます。
その光免疫療法は2種類、ひとつは「光免疫療法ICGリポソーム」、もうひとつは「光免疫療法ハイブリットリポソーム」。アメリカ式の「近赤外線免疫療法」とは使用する薬品や光が異なります。
ここではそれぞれの治療方法の概要とがん患者さんへの適応についてお話しします。
光免疫療法は光感作物質をがん細胞に届け、光をあててがん細胞を破壊する仕組みだということは繰り返しお伝えしてきたとおりです。この場合、光免疫療法ICGリポソームの「ICG」が光感作物質にあたります。
ICGはインドシアニングリーンの略で、緑色の色素です。特定の波長帯の光に対して励起、吸収、蛍光を発することから医療においてはさまざまな用途に使用されています。このICGをリポソームに分子的につなげたものがICGリポソームです。
ICGリポソームは特定のがん細胞に融合して蓄積する特性を持っており、その製剤を投与した後にがんの病巣に低反応レベルレーザー光線を照射することでがん細胞を破壊します。また、この治療によって破壊されたがん細胞から放出された物質は免疫細胞を活性化させます。
その免疫細胞は照射した部位以外に転移したがん細胞もターゲットと見なして攻撃するので、ICGリポソームは直接的にも間接的にも制がん作用があるといえます。
光線を照射することができる体の浅い部分にあるがんに対する治療が効果的であり、体の奥の臓器や骨腫瘍などには効果が薄いと考えられます。
前述のICGリポソームとは異なり、ハイブリットリポソーム製剤は腫瘍組織にナノ粒子が集積する特性(EPR効果)を活かしたものです。
空のリポソームをがん細胞に浸透させ、それが許容範囲を超えるとがん細胞の自然死(アポトーシス)が誘導されます。点滴で時間をかけてがん細胞へ浸透させるため、体の深い部分にあるがんにも効果を発揮します。
また、この治療に併せて低反応レベルレーザー光線(LLLT)を静脈内で照射することにより細胞内のミトコンドリアを活性化し、がん細胞の自然死を加速させます。
ハイブリットリポソームは細胞膜や生体膜の成分であるリン脂質でできているため、体への刺激が抑えられると考えられます。選択的にがん細胞へ蓄積するので正常な細胞には影響を与えず、副作用も少ないとされます。
ただし、ハイブリットリポソームはがんの病巣に直接光を照射するわけではないので、ICGリポソームのように短時間で効果が得られるわけではありません。
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